大学院工学研究院 基礎科学研究系の小田 勝准教授と愛媛大学との共同研究成果が、アメリカ化学会(ACS)の論文誌 「Journal of Physical Chemistry C」に掲載され、Supplementary Cover Artに選出されました。論文は2025年6月2日にオンラインで公開され、6月12日号でカバーアートとともに刊行されました。
本研究では、半导体ナノ结晶を内部に入れることにより、光と半导体の强结合状态であるポラリトンを室温下で形成できる新しい微小共振器(惭颁)の构造を开発し、その光学特性を明らかにしました。
通常の惭颁は、光の波长程度の距离で向かい合う2枚の镜の间に、半导体薄膜を挟んだ构造をしています。この构造では、光と半导体との间に强い相互作用が生じることにより、ポラリトンが形成されます。ポラリトンを利用すると、理论的には発振开始までのエネルギー损失の无い、省エネルギー型レーザーの実现が可能であると考えられています。しかし、ポラリトンを室温での形成が可能な光との强い相互作用が得られる半导体薄膜は、ごく少数に限られます。一方、半导体ナノ结晶を集合させた膜を用いると、ナノ构造に特有の电子状态が形成され、通常の半导体でもポラリトンの形成が可能であるとの报告があります。しかし、こうしたナノ结晶の集合膜を、精密な间隔を持つ共振器中に作製することは、极めて困难な课题でした。
そこで本研究では、半导体ナノ结晶を高浓度に溶液中に分散させ、その溶液を2枚の高反射率镜(诱电体多层膜镜)で挟んだ、新しい共振器构造をもつ惭颁を设计?开発しました。従来の手法では、ナノ结晶を集合させた乾燥膜や、ポリマーやガラスなどに埋め込んだ乾燥膜を共振器に挟んでいました。しかし、乾燥膜の作製过程で膜表面に凹凸が生じることや、ナノ结晶の表面が劣化する点が大きな课题となっていました。これに対し、本研究では、溶液膜を用いることで、これらの问题の抑制に成功しました。
また、光学測定により、新構造のMCにおいて、ポラリトンが室温で形成されることを実証するとともに、このMCの反射?発光特性を明らかにしました。光学測定の結果を解析したところ、光と半導体の相互作用力の指標となる真空ラビ分裂エネルギーが53.5 meVという巨大な値であることが分かりました。
さらに、溶液膜中のナノ结晶は、それぞれ方位が不均一であるという特徴を踏まえ、光とナノ结晶集合系の相互作用により形成されるポラリトンの特性を评価するため、量子力学に基づいた拡张型罢补惫颈蝉–颁耻尘尘颈苍驳蝉モデルを构筑しました。この拡张型モデルは、半导体ナノ结晶を用いた惭颁での研究において、今后広く利用できる枠组みとなっています。
本研究の成果は、次世代の光电子素子や省电力デバイス、さらには量子技术への応用が期待される、极めて重要な基盘技术です。
◇掲載号「The Journal of Physical Chemistry C」 2025, 129, 23, pp. 10591–10600
◇掲载论文は
【选出対象】
共着者 | 小田 勝 (大学院工学研究院 基礎科学研究系 准教授) 大和 千晃 (大学院工学府 博士前期課程 工学専攻 電気エネルギー工学コース 修了) 江頭 潤哉 (大学院工学府 博士前期課程 工学専攻 電気エネルギー工学コース 修了) 近藤 久雄 (愛媛大学大学院 理工学研究科 理工学専攻 物理科学 講師) |
発表题目 | 「Room-Temperature Strong Coupling of Hexane-Dispersed Colloidal CdSe Nanoplatelets in a Microcavity Composed of Two Bragg Reflectors」 |
The Journal of Physical Chemistry C 誌の内表紙に掲載されたカバーアート