正20面体準结晶における强磁性相転移の临界指数の同定に成功
国立大学法人九州工业大学大学院工学研究院基礎科学研究系の渡辺 真仁教授が研究代表者を務める東京理科大学、北海道大学、東北大学の研究グループは、正20面体準結晶*1の强磁性相転移*2を数値シミュレーションにより示すことに成功しました。これは3次元系の準结晶において磁気相転移现象をバイアスのない理论计算により示した世界初の结果であり、相転移を特徴づける临界指数の同定にも成功しました。これは物性物理学における重要な研究成果であり、既存の周期磁性体やスピングラスとは异なる、準结晶に特有の新たな磁性の开拓につながることが期待されます。
ポイント
- 3次元系の準结晶において磁気相転移现象を世界で初めて数値シミュレーションにより示した
- 正20面体準结晶における强磁性相転移の临界指数を同定することに成功
- 周期磁性体やスピングラスとは异なる準结晶に特有の磁性の普遍性クラスを発见
鉄の磁石が示す强磁性のように、电子の磁気モーメントが结晶全体にわたって秩序化する磁気相転移现象は、原子が周期的に配列した周期结晶ではよく知られています。一方、原子が不规则に配列したランダム系では、低温で各原子における电子のスピンがランダムに冻结したスピングラス*3とよばれる状态が実现することが知られています。このような周期结晶やランダム系とは异なり、原子が非周期的かつ规则的に配列した準结晶とよばれる固体が存在しますが(図(补))、これまで準结晶においてどのように磁気相転移现象が実现するのか、理论的にはよくわかっていませんでした。
本研究では、正20面体からなる3次元準结晶(図(补))の磁性のモデル(ハイゼンベルグモデル)に基づいて大规模モンテカルロシミュレーション*4を行うことにより、強磁性相転移が起こることを示しました(図(b), 図(c))。さらに比熱や磁化、磁化率について有限サイズスケーリング解析を行うことにより、無限に大きい系での相転移温度Tc、および临界指数*5を同定することに成功しました。その结果、周期磁性体やスピングラスとは异なる临界指数を発见するとともに、準结晶における新しい普遍性クラスを见出しました。準结晶では各サイトの局所环境がサイトごとに异なるにもかかわらず、降温につれて相転移温度Tc以下で协力的に全てのサイトのスピン相関が発达する协力现象が生じることも明らかにしました。
今后、準结晶における磁性の実験および理论研究が活発に行われ、周期磁性体やスピングラスとは异なる、準结晶に特有の新しい磁性の开拓につながることが期待されます。
なお、この研究成果は、2025年10月28日(火)午後11時(日本時間)に米国物理学会のオープンアクセス学術誌「Physical Review Research」に掲載されました。
■ 用語解説
■ 論文の詳細情報
| タイトル | “Monte Carlo study on critical exponents of the classical Heisenberg model in ferromagnetic icosahedral quasicrystal” |
| 着者名 | Shinji Watanabe, Tsunetomo Yamada, Hiroyuki Takakura and Nobuhisa Fujita |
| 雑 誌 | 「Physical Review Research」 |
| D O I | https://doi.org/10.1103/4zb8-2zjq |
※ 本研究は JSPS科研費JP22H01170, JP23K17672, JP24H01675, JP19H05819, JP19H05818, JP24K08041 の助成を受けたものです。
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