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磁性体におけるスキルミオンの凝缩现象の観测に成功 -スキルミオンの凝縮が水分子の凝縮と類似することを観測した-

更新日:2024.09.24

磁性体におけるスキルミオンの凝缩现象の観测に成功

― スキルミオンの凝縮が水分子の凝縮と類似することを観測した

九州工业大学大学院工学研究院の美藤正樹教授が研究代表者を務める九州工业大学、広島大学、福岡大学、大阪公立大学、岡山大学の研究グループは、磁性体中に生成されるナノメートルサイズの渦型のスピン構造体(スキルミオン*1)が、温度を下げていく過程で凝縮していくプロセスを、格子定数の温度変化を通じて観測することに成功しました。スキルミオンの数とサイズは温度や磁場によって操作でき、スキルミオンを有する磁性体は従来の強磁性磁区による磁気メモリーとは違う新しいスピンデバイスへの発展が期待されます。本研究は、スキルミオンが規則的に並んだ格子状態は、磁気秩序温度近傍で閾値以上の磁場を印加することで安定化することを再検証したという意味でも意義があり、スキルミオンを用いたスピンデバイスを設計する上での重要な物理学的知見を与えることになります。

ポイント

  • 反転対称中心*2を持たない结晶构造を有する磁性体において、スキルミオンの凝缩过程をはじめて系统性的に追跡することに成功した。
  • スキルミオンの形成に閾値となる磁场が存在することを検証した。
  • スキルミオンの凝缩プロセスが水分子の凝缩プロセスと物理的に同じであることを明らかにした。


スキルミオンはその形状が特徴的なこともあり、电子顕微镜による観察が一番直接的な物理的検出方法です。しかし、电子顕微镜による直接観察には试料の薄膜化が必要ですが、薄膜化によって薄膜特有の异方性が発生します。バルク结晶の结晶构造に固有の异方性によるスキルミオン形成を研究しようとしたとき、次なる手段として磁気测定や中性子回折実験が有効であり、それらによってスキルミオンの固体相(スキルミオン格子)が存在することは実験的に知られていました。液体状态については、中性子回折で実験的にその存在が示唆されていました。しかし、スキルミオン同士が孤立した気体状态から温度を下げていく过程で引力间相互作用が働き、液体状态が安定になり、最终的に斥力相互作用が働き、格子を组んだ固体状态になるという一连の过程を、温度をパラメーターに追跡した実験は过去にはありませんでした。本研究は、一种の磁歪効果を测定することで、スキルミオン形成とその凝缩过程で结晶格子がその影响を受けてわずかに歪むことを测定したものであり、実験方法自体は既存のもので新しくはありませんが、精密结晶构造解析の必要性を再検讨させるものであり、実験的に新たな境地を开拓するものです。また、格子定数の変化から判明したことは、スキルミオンの凝缩プロセスが、极性を有する异方的形状を有する水分子の凝缩プロセスと同じで、スピン构造体の凝缩现象としても面白い発见です。

今回の研究成果は、スキルミオンが安定化する磁場の存在を検証し、さらにスキルミオンの凝縮プロセスを系統的に観測できた点が実験的に新しく、スキルミオンのスピンデバイスへの利用に有益な物理学的知見を与えることが期待されます。なお、本研究成果は、2024年9月23日午前7時半(米国東部标準時)に米国応用物理学会の学術誌「Journal of Applied Physics」にFeatured Article論文として掲載されました。




■ 研究の内容


バルク结晶におけるスキルミオンは、反対称性の结晶构造に由来します。つまり、构造のキラリティが构造とスピンの强い相関により、スピンのキラリティに転写されることを意味します。本研究では、この逆の相関を利用しており、スピン系におけるスキルミオン形成が格子系にゆがみを与えるはずであるという考えのもと、格子定数の変化を観测することで、スキルミオンの凝缩プロセスの検証を目指しました。この研究は、スキルミオン形成とその凝缩によって上昇する潜在的エネルギーが格子系に拡散していることも示唆しています。スキルミオン凝缩における格子定数の変化は非常に小さく、高エネルギー加速器研究机构での放射光を利用した齿线回折実験で上记の现象を検証しました。まず、スキルミオンを出现させるにはある临界値以上の磁场が必要であることを再検証しました。そして、格子定数の减少(格子収缩)と上昇(格子膨张)の観测から、スキルミオン间の相互作用が引力的か斥力的かを知ることができ、スキルミオンの凝缩过程が、水分子の凝缩と似通っていることを明らかにしました。电子の自転による磁石の种であるスピンが涡状に集まったナノメートルサイズのスピン台风が集まって、最终的に周期的に并ぶプロセス、つまりスピン集合体の凝缩过程を、水分子の凝缩と関连付けて理解することが出来たことは、スキルミオンの物理的理解を推进し、理论家に重要な実験的示唆を与えることになるはずです。


■ 今後の展開


本研究は复数のスピンが构筑するオブジェクトを一つの仮想粒子と捉えて、それが生まれるにはある程度以上の磁场が必要であることを実験的に确かめただけではなく、それがどのような相互作用を感じて、孤立していた状态から、相互作用をし始め、最终的に格子を汲んだ固体状态に変迁するかという一蹴の凝缩现象を実験的に追跡することに成功しました。现在、多方面で、このオブジェクトをデバイスとしていかに利用していくか、という研究が进んでおり、それらの応用研究に今回得られた知见をどのように反映させていくかが课题です。


■ 用語解説


※1 スキルミオン : 複数のスピンが構築する渦上のオブジェクト。

※2 反転対称中心 : 空間座標の全ての成分に対して、それらの符号を変えた成分の座標に移る対称性が存在するときの対称中心。


■ 論文の詳細情報


タイトル “Magnetostriction Related to Skyrmion-Lattice Formation in Chiral Magnet FeGe”
着者名 Masaki Mito, Takayuki Tajiri, Yusuke Kousaka, Marina Miyagawa, Tamami Koyama, Jun Akimitsu, and Katsuya Inoue
雑 誌 「Journal of Applied Physics」
D O I 10.1063/5.0227382

※ 本研究は JSPS 研究拠点形成事業(Core-to-Core) A. 先端拠点形成型「スピンキラリティを軸にした先端材料コンソーシアム」(広島大学)の助成を受けたものです。



プレスリリース本文はこちら


【研究内容に関するお问い合わせ】
 九州工业大学 大学院工学研究院
 教授 美藤 正樹
 TEL: 093-884-3286
 E-mail: mitoh*mns.kyutech.ac.jp

 広島大学 大学院先進理工系科学研究科
 教授 井上 克也
 TEL: 082-424-7416
 E-mail: kxi*hiroshima-u.ac.jp

 福岡大学 理学部 物理科学科
 助教 田尻 恭之
 TEL: 092-871-6631
 E-mail: tajiri*fukuoka-u.ac.jp

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